

ESPRESSO BLEND「あなただけに」
「bespoke(ビスポーク)」という言葉には、よくある誤解がある。仕立て屋と客が言葉を交わしながら、対話の中で一着を仕立て上げていく、その”会話”こそが語源だという説だ。魅力的な話だが、実際は少し違う。この言葉は「bespeak」という動詞、「be spoken for(あらかじめ話がついている、予約されている)」に由来する。生地の反物が棚に並んだ時点で、まだ裁断される前から、それが誰のために使われるかが決まっている。既製品のように誰でも買えるものではなく、最初から特定の一人のためだけに、話がつけられていたものだった。
もちろん、実際の仕立ての工程では、採寸や生地選び、幾度かの仮縫いを通して、仕立て屋と客が言葉を交わしながら一着を仕上げていく。そうした対話の積み重ねがあったからこそ、この言葉に「会話」のイメージが重なっていったのも、無理のないことなのかもしれない。だが元々の意味は、もっと単純で、もっと確かなものだった。最初から、あなたのために。
私たちのエスプレッソも、注文を受けてから、豆を挽き、圧をかけ、その場で一杯分だけを抽出する。作り置きはできない。目の前のあなたのために、その瞬間、その一杯だけが仕立てられる。
話をしてもしなくても、いつもあなただけのために。




